コラム

JUST There(そこが訊きたい)! 斉藤先生(16)

(前回よりつづく)

――  なんでも費用対効果で推し量りがちなアメリカでは、やはりそういうコストに敏感なんですね。

斉藤先生:じっさいにアメリカやイギリスは、そういうアディクトたちを刑務所に入れてた時代があるのね。だから、やたら刑務所に入れれば金がかかるということを、社会が知っている。

ところが日本は、いままでの歴史でそういう経験がないので、アル中に上手に金を使うということを知らない。

アメリカの場合は、メディカライゼーション(medicalization)といって、それまで囚人として刑務所で扱っていた人々を、医療の手に渡すということが、社会的に意味づけされているから、関係者たちはよくわかっているわけだ。

――  なるほど。

斉藤先生:こういう巨視的な立場というのも、私の精神医学に向かい合うときの一つの特徴なんだけどね。

まあ、それは日本では、「社会学者がやってるんだから、お前ら精神科医はやらなくていい」っていうかもしれないけど、そういうわけには行かないでしょう。目の前に来ている患者たちっていうのは、アメリカにおけるメディカライゼーションの影響を受けて来ているわけだから。




(つづく)