用語集

サバイバー

「生き延びた者(suivivor)」というのが、もともとの意味です。
虐待災害など、さまざまな原因から生じた傷を、心や身体に負っても、なんとか生き延びている人のことを言います。

必死の思いで何とか生き延びている人も含まれるため、「自分はほとんど死ぬような思いで日々刻々の命をつないでいるだけで、十分に人生を謳歌(おうか)していないのでサバイバーではない」という考え方は正しいとは言えません。生きているかぎり、それでもうサバイバーです。

その点に関して、もう少し詳しく考えてみましょう。
英語などでは「victim(犠牲者、被害者)」と「suivivor(サバイバー)」が相対するものとして考えられ、治療者や、自助グループの先行く仲間から「victimがvictimであることをやめなければ、suivivorにはなれない」などと言われることが多いようです。それによって力を得る人もいれば、逆にいまだ症状に悩まされている人がさらに追い詰めたりします。

また、被害者が、


I: 破局の段階
被害によって壊された破局が続いていると感じている状態。






II: 安堵と混乱の段階
とりあえず破局が終わったことを知り、文字どおり安堵すると同時に、なぜこんなことが起こったのか、その結果をいったいどうやって受け入れればよいのかに混乱している状態






III: 回避の段階
不安とストレス症状を減らすための対処法の一つとしてさかんに回避をしている状態






IV: 再考の段階
回避が過ぎ去り、衝撃と喪失に直面する心の準備がととのった状態






V: 適応の段階
被害は過去の出来事として客観的に感じられるようになり、安心感をふたたび獲得できる状態





の5段階へ経てサバイバーへとなっていくという理論もあります。

しかし、それは学者が拠って立つための理論としては有効かもしれませんが、じっさいには混乱と回避と再考と適応を往ったり来たりしている人も多いでしょうし、まず何よりも日本語の通常の感覚では、「 犠牲者・被害者であり、なおかつサバイバーであるということがふつうなので、「被害者」と「サバイバー」は必ずしも対立する言葉と考えるべきではないでしょう。

回復のプロセスとしては、まず自分が被害者(victim)である自覚を持ち、そこから抜け出してサバイバー(suivivor)となり、さらに自ら人生を盛んに生きる成功者(thriver)になっていくのが理想のモデルとされます。

しかし、個々人の症例や人生がたどる道筋は、人の数ほど多種多様であると考えるのが現実的であることでしょう。