用語集

中毒

中毒(ちゅうどく / intoxication)とは、何かの毒にあたることです。嗜癖(しへき)と間違われることが多いようですが、これら2つは対照的に異なります。

中毒は、本人が選んでそれを摂取したかどうかにかかわらず、何かの毒を摂取した結果として生じる、好ましくない状態のことを言います。一方、嗜癖は、本人が選んでそれを摂取した結果として生じている状態です。その状態が、社会的に好ましくなくても、本人が選んだという意味において、本人にとっては好ましいものと考えます。

たとえば、ある工場から工業用アルコール(メチルアルコール)が流れ出して、通りかかった人が間違ってそれを吸ってしまいフラフラになったとしましょう。これは本人が、選んで摂取したわけではないですから、フラフラになった状態は「アルコールの中毒」と考えられます。
いっぽう、別の人がお酒(エチルアルコール)を飲んで、やはりフラフラになり、その状態が楽しくてやめられなくなったとしましょう。状態そのものは酩酊(めいてい)として同じかもしれませんが、この場合は「アルコールの嗜癖」と考えられます。

しかし、嗜癖をやめようとして治療や自助グループにつながっている人々に向かって、「嗜癖は本人が選んでやっている」などと言えば、当然のごとく強い反感が示されることでしょう。本人が苦しんでいることを「あなたは選んでそれをやっている」などと軽々しく言われたら、かえって本人は混乱し、事態の悪化を招くかもしれません。
やめようと思いつつも選ぶというところにも、人の行うことにはすべて理由があるものです。
「選ぶ」「選択」という行為は意志によるものと言えますが、その意志が本人の意識のどのレベルで作動しているかを、よくよく探らなければなりません。
また、それを探ることが、治療回復のプロセスでもあります。