PTSD |
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PTSD(ピー・ティー・エス・ディー:Post Traumatic Stress Disorder)とは、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と訳します。長たらしいので、一般にはPTSDで通っています。トラウマ(心的外傷)を負うことにより、その後の人生において解離や鬱(うつ)、睡眠障害、嗜癖行動などの症状が出て、長くそれらに悩まされることをいいます。 PTSDの研究は、19世紀にはすでにフロイトやシャルコー、ジャネによって行われていたのですが、20世紀前半に一時的におこなわれなくなり、20世紀中ごろから戦争トラウマを受けた兵隊や、レイプなどの性被害にあった女性が、その後に発症する問題行動の分析を中心に、ふたたび研究されるようになってきました。まず、そのことは、それらはASD(急性ストレス障害)と名付けられました。 ASDは今でも概念として用いられており、2011年現在の診断基準、DSM-IV TRでは、トラウマを負ってから症状が1ヶ月以上持続している場合にはPTSD、1ヶ月未満の場合にはASDとしています。 そのうちに、ASDやPTSDは、戦場のような特殊な環境だけに起こるものではなく、ごくふつうの市民生活の中でも起こるということが気づかれ始めました。家族という密室を隠れ蓑にして、子どもたちが長期にわたり、親をはじめとした大人たちから受けるさまざまな形の児童虐待や性暴力が、子どもが大人になったときにPTSDを起こさせることがわかってきたのです。 日本では、阪神淡路大震災の起こった1995年前後から、急速に知られるようになりましたが、まだ本当の意味ですべて理解されているとは言えないところがあります。 近年では、戦争や災害など一回的なトラウマによって起こるPTSDから、虐待など長期にわたってジワジワと刻みこまれたトラウマによるPTSDを区別してC-PTSD(複雑性PTSD)と呼ぶようになってきました。 PTSDの治療としては、私たちJUSTの自助グループがおこなっているようなミーティングによる回復、語りによる療法をはじめとして、薬物療法、デブリーフィング、カウンセリング、認知療法、認知行動療法、暴露療法、EMDRなどなど、じつに多くの治療法が開発され、おこなわれています。しかし決定的なものはまだ研究の途上にあるといってよいでしょう。 どの療法がよいかについては、治療者のあいだでコロコロと風向きが変わります。それは治療者同士のパワーゲームや、その時々の風潮によって決められているところもあり、じっさいに長くPTSDに苦しむ者、患者の立場にいる者は、うっかり鵜呑みにできないときもあります。 詳しくは本サイトのコラム「治療は何のためか」もごらんください。 私たちJUSTは、そうした病む者、患者たちによるユニオン(連合体)として、患者の立場から情報を発信しています。 |