インナーマザー |
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インナーマザー(inner mother)とは、頭の中にあって、その人を支配する想像上の母親のことです。じっさいの母親が支配的であると、この想像上の母親によって支配される割合も大きくなりますが、あくまでもじっさいの母親とは別の存在で、インナーマザーは、じっさいの母親がすでにいないのにもかかわらず、その人が自分の頭で拡大再生産している場合もあります。 これが肥大していると、自己評価が低くなり、その人の人生がおしつぶされ、のみこまれていってしまいます。押し殺している分の欲望は、自分の意識しない方向へ出ていき、嗜癖や問題行動などを起こすことになります。 フロイトは、人の自己を成り立たせる一部として、欲動や衝動をおさえこみ、自我を検閲する役割をはたしている部分を超自我(ちょうじが)と名づけましたが、専門家でない人が理解するぶんには、それと大差ないと考えていただいてよいでしょう。 しかし、フロイトがそれを言っていたときには「父」を想定している側面が大きくありました。フロイト後に発展したメラニー・クラインなどの母子関係論をもとにして、人がこの世界に生まれてきて、最初にわたりあう他者が通常は母親であることから、インナーマザーと呼ばれるようになりました。 |