用語集

リカバリー

リカバリー(recovery)とは、「回復する(recover)」という英語の名詞形で、直訳すればもちろん「回復」であるはずですが、近年はリカバリーというカタカナ言葉が、回復という漢字言葉から離れて独自の意味を持ちはじめているようです。

まず「パソコンのリカバリ」(なぜかこういうときは長音記号「ー」をつけませんね)などというときの「recovery」は、復元と訳されます。回復と訳されないのは、recoverする主体が生きているものではなく、そのため成長することがないからでしょう。

recoverという語は、何かを再び( re- )覆い隠す( -cover )という意味から来ています。
たとえて言うならば、放射性物質でもアスベストでもいいのですが、何か問題のある物質が地面から露呈して、その地域が大騒ぎになったときに、それにふたたびブルーシートなどでカバーをかけることをいいます。依存症者やアダルトチルドレンであれば、それにともなう数々の症状を発する前の状態へ押し戻すことを意味しています。

しかしそれでは、いつまた何かの拍子でブルーシートが風で飛んで、カバーされていた問題物質が露呈するか、わかったものではありません。病気を再燃させる環境を整えたわけです。

そのため、たとえば近ごろの日本語でいう「おれ、リカバっちゃった(自分はrecoverしてしまった)」といった表現は、「自分はまた潜在的に病気になりました」と意味であり、少なくともお祝いできることではないことでしょう。

言葉の進化は、必ずしも概念の進化と同じ速さではないので、こうしたことがたびたび起こります。

現在、考えられている回復の概念は、recoverよりもむしろdiscover(カバーをひっぺがす、発見する)に近いものです。すなわち、問題を覆っていたカバーをとりはずし、中の問題物質をきっちりと処理して、危険ではないようにすることをいいます。

回復」の項もごらんください。