用語集

欲動

欲動(よくどう / drive)とは、人間が生きていく現象を根底でつきうごかしているエネルギーの大きな動きをいいます。長い目で見れば、人間は欲動によって生まれ、生き、死んでいくのです。

衝動(しょうどう)と似ていますが、たとえて言うならば、欲動はちょうど大洋の底を流れる海流のようなもので、その人の人生を根本から動かしており、それに対して衝動は、海面にパシャパシャと立っている水しぶきの波のような、日常生活に顔を出してくる表面的なものの概念をいいます。

フロイトが「死の欲動」と呼んだドイツ語 Todestreib が、英語で death drive と訳されたことから、英語では欲動をdriveといいますが、ドイツ語で Streib を単独に名詞で使うことはほとんどありません。
そのため、長らく翻訳の仕方が問題になってきました。

日本では長いこと「生の本能」「死の本能」と訳してきましたが、あきらかに「本能」(独 Instinkt, 英 instinct)とは区別されるべきとの考えから、欲動と訳されるようになりました。