心的現実 |
---|
心的現実(しんてきげんじつ / mental reality)とは、客観的または物的にそういうことが起こったかどうかにかかわらず、本人が嘘をついているつもりでなく、心の底から「それが起こった」と信じているような現実のことをいいます。物的現実の反対語です。 他に見ている人が何人もいて、互いにグルになっているわけでもないけれど、口をそろえて「それはそのとき起こらなかった」と証言でもすれば、客観的に、もしくは物的には、それは「起こらなかった」と解釈され、そう確定していくかもしれません。げんに裁判などでは、そういうふうに物事が決まっていきます。 しかし裁判などで確定される事実と、心的現実とは、いちおう関係がありません。 本人がそこまで「それは起こった」と信じており、しかも嘘をついているつもりがなければ、それそのものが起こったかどうかはさておき、「何かがあった」と考えるのが順当ではないでしょうか。 物的には、本人が言っている通りのことは起こらなかったにしても、少なくとも本人がそれが起こったと信じるようになるに足るだけの背景や文脈や過去の記憶があると考えられます。 「火のない所に煙は立たぬ」といいますが、煙が立っているのだから、どこかに火があるのだろう、という考え方です。 ナラティブ・セラピーなどで、物的現実よりも心的現実のほうに治療的な価値が置かれる場合が多いのは、そうした理由によるものです。 |