用語集

アダルトチルドレン6つの役割

アメリカのセラピスト、クリッツバーグ(Kritsberg,W)が1985年に出した『ACOA症候群(The Adult Children of Alcoholics Syndrome)』という本の中で、成人してアダルトチルドレンとなった人々が、子ども時代に機能不全家族のなかで、どのような役割を担わされていたかについて言い表したものです。

「6つの役割」といっても、パターンがこの6つに分かれるという意味ではありません。細分化していけば、もっと役割の名は挙げられることでしょう。しかし当時、アメリカ社会に浸透しつつあったアダルトチルドレンという概念の理解のために、代表的な子どもたちの性格を、とりあえず6つにまとめたのでした。



ヒーロー(hero / 英雄)
 ある分野において家族の外、世間に評価をされる子どもで、その子のさらなる活躍に家族が期待して、それに熱中するあまり、両親の冷たい関係が一時的に良くなったりします。そうすると子どものほうでも、その期待に応えつづければならないので、ますますがんばってしまう子ができあがります。
 こういう子が世間に出て、何らかの挫折にあったときに、問題が発症することが多くあります。



スケープゴート(scapegoat / いけにえ)
 ヒーローの裏返しにあるのが、スケープゴートです。
 一家の中のダメをひとえに背負いこまされているような子です。
 いっけんそのようには見えない非行型のスケープゴートもあります。
 この子さえいなければ、すべては丸く収まるのではないか、との幻想を他の家族のメンバーに抱かせることによって、その家族の真の崩壊を防いでいます。
 家族の感情のごみ箱ともいえることでしょう。



ロスト・ワン(lost one / いない子)
 けっして目立たないことによって、存在し続ける子です。「壁のシミ」のような存在です。
 とにかく静かで、ふだんはほとんど忘れ去られています。家族がいっしょに何かやろうというときにいないのですが、いなくなったことにも気づかれないような子です。
 本人はこうした形で家族内の人間関係を離れ、自分の心が傷つくことを免れようとしています。



プラケーター(placater / 慰め役)
 一家の中でいつも暗い顔をしている者、たとえば夫の飲酒でため息をついている母親や、妻の狂奔に疲れ果てている父親を、有言無言にいつもなぐさめているような子です。
 家族の中の小さなカウンセラーともいうことができるでしょう。



クラン(clown / 道化師)
 慰め訳の亜種として存在する子です。たとえば親たちの間にいさかいが始まり、家族に緊張が走るような時、突然とんちんかんな質問をして笑わせたり、歌い出したり踊り出したりする子です。
 こういう子はふだんから表面的には非常にかわいがられていて、ペット的な存在です。本人もかわいがられることを楽しんでいるようなのですが、道化師の仮面の下にはさびしい素顔がひそんでいます。



イネイブラー(enabler / 支え役)
 他人の世話を焼いてばかりいることで、自分の問題から逃げ回っている子です。偽親とも呼ばれ、第一子がこの役につくことが多いですが、長男がヒーローやスケープゴートになってしまうと、その下の長女などがこの役につくこともよくあります。
 母親に代わって幼い弟妹の面倒をみたり、ダメな父親にかわって母親のケアをさせられることで情緒的近親姦になっている場合もあります。
 こういう子は成人してからもイネイブラーになることが多いです。




これらの子どもたちに共通しているのは、自分の都合ではなく、親の機嫌や顔色、家の中の雰囲気を優先して物事や行動を決めていることです。
子どもたちは、意識してそのようにしているのではありません。無意識の言語、すなわちふるまいとして出てくるのです。
そのため、そういう役割をになっていることは、当の本人にはわからないのが通例です。