用語集

アディクション

アディクション(addiction)とは、文脈によって嗜癖(しへき)とも依存症とも訳されますが、ある習慣への執着をいいます。

もともとアディクション(addiction)という英語は、薬物依存や物質乱用を示した言葉ではなく、ラテン語の addicere (割り当てる、ゆだねる)の過去分詞 addictus を語源としており、「ゆだねられた」→「担わされた」→「取り憑かれて離れない」と意味がうつりかわり、「取り憑かれたもの(obsession)」と重なるようになったものだと言われています。

そのためアディクションの本質を考えるには、アルコールを含む化学物質の常用からはいったん切り離して考えなくてはなりません。

アディクションは昔から人間の生活の中に日常的に見られ、精神医学では従来これにズフト(独; Sucht)、マニー(仏; manie)、マニア / メニア(英; mania)など多くの呼び方を与えてきました。

ギデンズは、アディクションを生理的現象よりもむしろ社会的心理的現象としてとらえ、
「アディクションとは、不器用で衝動的な過去の反復である」
と述べており、その特徴を「行為の最中の高揚感、自己喪失、生活時間の一時的停止、行為のあとの後悔、禁断症状」と定義しています。

また齊藤學は、
「過去が、祭りや年中行事のような共同体的伝承として繰り返されることが減ってきた現代社会においては、個人史の中にある種の衝動脅迫として繰り返されることが少なくなり、それによって『偽りの自分』を演じる人々がふえたが、このような『嘘』と、それにともなう『生きる時間の一時停止』こそがアディクションの本質である」
と述べています。

専門家のあいだでは、DSM-Vへの改訂にともない、アディクションの訳語も「嗜癖」から「依存症」へ統一することが話し合われています。