用語集

強迫

強迫という語は、一般的には民法で主に用いられる法律概念で、刑法の用語である脅迫(きょうはく)とほぼ同じく、人をおどかして何らかの行為を強いることをいいますが、ここでは強迫反復強迫性障害(以前の強迫神経症)などの文脈でつかう、精神医学上の強迫(きょうはく / complusion)についてお話しします。

いうまでもなく人は生物の一種であり、そのためそれぞれの人の身体は一つの生体ですが、人が生体として生きていくのには必要がないのに、もしくはむしろ害があるのに、ある行為にこだわっておこなうときに、その現象がこの強迫という概念で説明されます。

そうした行為の多くは習慣となっており、また強迫反復として繰り返されていることです。

生体として生きていくのには必要がなくても、なぜおこなうかというと、その人が精神を持つ人間として、心的に何か必要があってやっているからです。

本人がそれを強迫的にやっていると自覚している場合は多いですが、強迫をおこなう心的な必要については、とことんまで自覚されていない場合の方が多いことでしょう。
なぜならば、もし強迫による行為が症状となっている場合、本人はそれで苦しんでいるはずであって、なおかつなぜそれをやっているか必要や理由が自分で完全にわかっていれば、自分なりにそれを考えることによって取り除くことができるからです。

しかし、人の心の成り立ちはとても複雑であり、皆無とは言わないまでも、それを意識的に自分の力でとことんまで考え、完全に取り除くことは大変むずかしいものです。
それを外部から、例えば治療者という他者の力によって取り除こうと考えたのが、かつての精神医療精神分析のめざしたところでもありました。
近年は、かつての反省を踏まえて精神医療のかたちも変わってきましたし、また治療者という存在を入れないで回復への道をさぐる自助グループなども盛んになってきました。