塩分 |
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塩分(えんぶん)とは、海水を乾燥させたり、岩塩を採掘したりして生産される塩(salt)という調味料が含まれる成分で、化学的には塩化ナトリウム(NaCl)が含有されているものということになります。 人間をふくめて地球上の多くの生物は、塩分なしでは生命を維持することができません。現代でも、たとえば真夏の暑い最中は、いくら水を飲んでいても、塩分をバランスよく摂取しなければ、熱中症になり、ときには死に至ります。 しかし、塩分の取り過ぎは高血圧や腎臓病、心臓病などの遠因となることが、近年しきりと指摘されるようになりました。塩分をとりすぎると、血中のイオン濃度を一定範囲に保つために、知らず知らずのうちに水分を取るようになり、血液をふくめて体液の量が増えて血圧が高くなるため、またこれら体液を体外へ排出するのをつかさどる腎臓に負担がかかるためとされています。 こうして塩分は、生活習慣病を引き起こす悪者として語られることが多くなりました。 しかし、ここでいくつかの疑問が呈されました。生活習慣というものは、そもそもその地方の文化から生じているものではないのか。文化である以上、そんなに健康に悪いわけはないのではないか。どうして塩分をたくさん取る文化が生まれたのか。昔の人は生活習慣病ではなかったのか、などなどです。 これに対してまず、デスクワークが多い現代と違って、昔は肉体労働の比重が大きく、さらにエアコンなどもありませんでしたから、相対的に汗をかく量が多かったという事情が考えられます。それだけ身体が塩分を要求していたというわけです。 そのころ生活習慣として、つまり文化として、食生活の中に残っているが、もはや痕跡となっていて、身体は塩分をそれほど必要としなくなったので、一種の需要と供給のバランスがくずれ、生活習慣病が生じてきたのではないか、という考え方です。 この問題は、嗜癖や依存症の発生と密接にかかわりがあります。 つまり、そのときは何らかの合理性があって身についた習慣が、もはや需要と供給のバランスがくずれ、かつての行動が痕跡となり、そのまま続いていることが、嗜癖や依存症となっていくことが一つの側面としてあるからです。 じじつ、塩分についても、「どうも塩辛いものでないと食べた気がしない」などと、気持ちの問題でどんどん摂取量がふえていくことがあり、これは依存症における耐性の問題として考えられます。 そのため塩分嗜癖という語もつかわれるようになりました。 |