シャルコー |
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ジャン=マルタン・シャルコー(Jean-Martin Charcot, 1825 - 1893年)は、19世紀フランスの神経学者で、催眠療法の大家であり、ヒステリーの研究でも知られていた人でした。のちの精神医学をリードしていくフロイトもジャネも彼の門下として学びました。 シャルコーは、当時のフランス第一の精神病院、サルペトリエール病院(Salpêtrière)の医長の一人として、膨大な臨床データをもとに催眠療法とヒステリーの研究を進めました。 人間や動物のからだに磁気があると説く生体磁気説に根拠を置き、その磁気を利用してかける「大催眠」、磁気を利用せず暗示によって患者をトランス状態にもっていくことを「小催眠」と呼びました。 シャルコーの催眠療法に関する講義は一般に公開され、シャルコーを支持するサルペトピエール学派が毎週火曜日に集まっていました。医師を主とする多くの聴衆が、目の前でシャルコーがヒステリー患者に催眠をかけ、患者がぐったりと脱力していくさまを見て驚いている様子が、当時の絵画に残されています。 聴衆の中に、フロイトやジャネもいて、シャルコーという師の下でライバルとしてしのぎを削っていきました。 フロイトのシャルコーへの傾倒はたいへん著しく、のちにフロイトが重要な論文を母語であるドイツ語でなく、フランス語で執筆したのも、シャルコーの影響であったと言われています。 しかし、サルペトピエール学派自体は、のちにナンシー学派と小催眠についての論争で敗れ、そのために催眠療法はそのままの形で発達していくのを阻まれ、フロイトも精神分析へと道筋を変えることにつながっていきました。 シャルコーは、パーキンソン病の命名者でもあり、シャルコー・マリー・トゥース病などにその名を残しています。 |