当事者 |
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当事者とは、対象となっている問題を直接的に体験し、その影響を受けている個人のことをいいます。「体験し、影響を受けている」と思っていることが当事者意識(とうじしゃいしき)を形成します。「体験したけれど、影響を受けたと思っていない」人は、必然的に当事者として表に出てこないことでしょう。 英語では、日本語のように一語で該当する言葉がなく、「the person concerned(関わっている人)」のように表現します。 「関わっている人」というと、「それなら、問題の周囲の人も、支援している人も、近所の人も、みんな何らかの意味で関わっている人だから当事者になる」と考える人もいますが、これは間違いです。当事者とは、あくまでも対象の問題を直接的に体験した本人のみ、すなわち通常は「加害者」「被害者」の二つのみになります。数に注目していただくとわかりやすいように、それゆえに、「当事者」の対義語が「第三者(a third person, - party)」となるのです。それぞれ「加害当事者」「被害当事者」と表現されることもあります。 2012年に佐々木俊尚著『当事者の時代』が出版されてから、「当事者」といえば説得力を持つと考えるのか、意味もわからず「当事者」という語を乱用する人や団体が増えてきました。 中には、ある虐待事例を扱うのに、被害者の治療者までも「治療をしている当事者」だと強弁して当事者に入れている団体もあるようですが、これはとんでもないことです。それでは、わざわざ当事者という概念を設定した当初の意図すらなしくずしになります。 また、ある事象に関して、ほんらい支援者も支援団体も当事者ではありません。支援に関わった結果、新たな問題が起こり、その当事者である、ということはあるかもしれませんが、そこまで「当事者」という看板にこだわるとなると、いったい何のためにという疑念を持たれるべきでしょう。 |