用語集

神経症

神経症(しんけいしょう / Neurosis)は、1780年から1785年の間に、英国エディンバラを舞台に活躍していたウィット(Robert Whytt)とカレン(William Cullen)のどちらかが使ったのが最初とされています。はじめのころは、嗜眠状態、失神、理由のない昏倒、痙攣や発作、視力の喪失や無感覚症などがみられたのに検死解剖の結果、神経系統には炎症や破壊などの明確な障害が発見されないというような神経障害を意味するものとして作られました。


つまり、神経系に起こった目に見えない病変を、いずれ科学の発達が突き止められるだろう、という期待のもとに神経症という病名だけ先に作られたような側面があるというわけです。

それが、神経経路反射弓の発見によって、「神経症とは、ある種の反射神経が異常を起こしている現象である」という可能性に期待が持たれるようになりました。1860年代にこうした概念が出てきたことは、当時の精神医学の世界が時代の最先端の研究に乗り入れる機運に満ちていたことをも物語ります。

1880年代、ヴント(Wilhelm Wundt)は、障害のある反射神経は人間の思考や観念、記憶などの連合を弛緩させる可能性があることを指摘します。こうして19世紀末から20世紀にかけての、フロイトジャネによる神経症の一連の研究へとつながっていきます。

フロイトジャネは、ほぼ同じ時期に異なる経路で、ヒステリーが神経機能の原発性障害よりも、むしろ記憶障害や連想の分裂に関与するという結論に達し、それぞれの方法でプシケ(Psyche)の現代的定義づけをおこないました。プシケとは、端的にいえば「心の病い」などというときの「心」のことであり、睡眠や食欲のような自律的作用ほどは神経系統の機能に依存せず、道徳的行動の領域ともまたいくぶん異なった、高次元な心の機能のことです。