シュナイダー |
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クルト・シュナイダー(Kurt Schneider, 1887年1月7日 - 1967年10月27日)は、ドイツの精神医学者。統合失調症をはじめとして、精神疾患の診断の確立に邁進しましたが、「うつ」の考え方については、ある意味で特筆に値します。 ドイツのクライスハイムに生まれ、ベルリンとテュービンゲンで医学を学び、1931年、エミール・クレペリンが設立したミュンヘンのPsychiatric Research Instituteの役員になりましたが、当時のドイツにおいてナチスによって推進されていた優生学に嫌気がさして研究所を去り、第二次世界大戦中を軍医として過ごしました。大戦後、シュナイダーにはハイデルベルク大学の医学部長のポストが与えられ、1955年に引退するまでその職を全うしました。 シュナイダーは、実存主義哲学者で精神科医であったカール・ヤスパースと同じく、兆候や症状の内容ではなく、それらの形態に基づく診断を支持しました。例えば彼は、妄想は信念の内容ではなく、その信念の持ち方を元に診断すべきだと主張しました。 今日でいううつ病、もしくは新型うつ病を含む気分障害に関して、シュナイダーは慢性的に不幸と感じるだけの患者を、ほかの精神疾患を持つ患者から識別する方法を求めました。意欲と意志に関する一連の重要な障害を、内因的、生気的、生物学的、メランコリー性抑鬱などとさまざまに呼ばれているプロセスの特質として選び出し、彼自身が「感情病」あるいは「感情精神病」と呼ぶものを重視し、「感情神経症」「抑鬱反応」「鬱病」などを認めませんでした。その点で、アメリカのアドルフ・マイヤーと対比されます。 シュナイダーの定義によれば、抑鬱神経症は100万人につき50人程度の、非常にまれな障害ということになります。 「考えが聞こえる」「思考の流出」などの、「シュナイダーの一級症状(first rank symptoms)」とは、今日に至るまで統合失調症の診断に使用されています。 ただし、この「一級症状」を使って統合失調症を診断することについては、当初から疑問が持たれています。事実、統合失調症とはまったく違う解離性同一性障害(いわゆる多重人格)の患者が高い確率でこの一級症状を満たすことが知られています。 その一方では、シュナイダーは自身の臨床経験に基づきながら、よく見られる精神病質を10個の類型にまとめました。それらは「抑鬱者」「無気力者」「爆発者」「自己顕示者」「意志薄弱者」「発揚者」「人間性欠落者」「狂信者」「情緒易変者」「自信過小者」などですが、今日ACと呼ばれる人たちは、ほとんどと言ってよいほど、これらのどこかに入ってしまうことでしょう。 |