用語集

セロトニン

セロトニン(serotonin)とは、モノアミン類の神経伝達物質の一つで、人の精神活動のなかで落ち着きや生体リズム、睡眠、体温調節、ゆとりを持つことに関連すると考えられている物質ですが、人間だけでなく動植物に広く分布する生理活性アミン、インドールアミンの一種です。

化学的には5-ヒドロキシトリプタミン(5-hydroxytryptamine)と記され、「5-HT」「5HT」などと略されます。
必須アミノ酸のトリプトファンから作られることがわかっており、食事の中のトリプトファンが少なくなると、体内で作られるセロトニンも減少すると考えられています。
いまやメジャーな抗うつ薬となったSSRISNRIは、神経のなかで少なくなったセロトニンを補充する薬だと考える人が多いようですが、そうではなく、セロトニンが神経のつなぎ目であるシナプスで、受容体から再び取り入れられるのを邪魔する薬です。
しかし、SSRIなどが普及して十年余りが経ち、ほんとうにSSRIはうつに対して効果があるのか、ということが今日さかんに疑われるようになってきました。そのことについてはモノアミン仮説も参照してください。

その欠乏が鬱の原因と目されたおかげで、うつ症状に苦しむ人のあいだでは、このセロトニンという物質がとても有名ですが、そもそもその発見は、1933年にイタリアのヴィットリオ・エルプサメール(Vittorio Erpsamer)が消化管癖の収縮を促進する化合物を消化管の中から分離し、エンテラミンと名づけたことにさかのぼります。

1947年、これと同じ化合物が、アーヴァイン・ペイジ(Irvine Page)とモーリス・ラポール(Maurice Rapport)によって血小板から分離され、血管を収縮させる作用を持つ物質としてセロトニンと名づけられました。そのときに英語で「平静さ」を意味するセレニティ(serenity)にちなんだとする説もあります。

セロトニンが5HTと略称されるのは、その化学式5-hydroxytryptamineのためですが、この化学式から考えると、ヒッピーが盛んに使っていた幻覚剤の麻薬LSDと構造的な類似性があります。そのため、セロトニンは当初、脳内物質とは関係のないところから発見されたのにもかかわらず、脳内にあって神経障害に関係している物質ではないか、と考えられるのようになったのです。