用語集

アドレナリン

アドレナリン(英:アドレナリンadrenaline、米:エピネフリンepinephrine)は、副腎髄質から分泌されるホルモンであると同時に、カテコールアミンの一つとして神経節や脳神経系における神経伝達物質でもあります。分子式はC9H13NO3。血中に放出されると心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開き、血糖値を上げる働きなどがあります。
アドレナリンの発見にはいくつかの流れがあります。まず1895年にナポレオン・キブルスキーが動物の副腎から抽出したものには血圧を上げる効果が見られ、これにはアドレナリンとその他のカテコールアミンが含まれていました。彼はこれらの抽出物をnadnerczynaと呼びました。
つぎに1900年に、ニュージャージーの研究所にいた日本人の高峰譲吉と助手の上中啓三がウシの副腎からアドレナリンを発見し、翌年、世界で初めて結晶化に成功しました。
一方、ドイツのフェルトはブタから分離した物質にラテン語で「スプラレニン (suprarenin)」、アメリカ合衆国の研究者ジョン・ジェイコブ・エイベルはヒツジの副腎から分離した物質にギリシャ語で「エピネフリン (epinephrine)」と名づけました。
1905年、エリオット(T.R.Elliot)は、ある物質が交感神経から分泌されることを確認し、これにシンパシンと名づけました。のちにこの物質はヨーロッパでアドレナリン、アメリカではエピネフリンと呼ばれるようになりました。
1905年、ラングレーは神経からのシンパシン(アドレナリン、エピネフリン)の放出とそれに対する反応は、刺激を受けた細胞におけるエフェクターまたは抑制性受容物質の有無に左右されるとしました。わかりやすく言えば、今日のSSRISNRIなどがみんなそうした造りを持っているように、薬を鍵にたとえれば、受容体は鍵穴であるように、特異的に薬や物質が作用する姿に代表される受容体理論のはじめとなる発表がおこなわれたのでした。

現在ではアドレナリンもエピネフリンも同じ物質のことを指しています。生物学の教科書・論文では世界共通でアドレナリンと呼んでいるのに対して、医学においては世界共通でエピネフリンと呼ぶ傾向があるようです。日本では医薬品の正式名称を定める日本薬局方が改正され、2006年4月より、一般名がエピネフリンからアドレナリンに変更されました。